「夢と挑戦」が作品のテーマ

山岳小説家として素晴らしい作品の数々を執筆された新田次郎さんですが、ご本人は「山岳小説家」として呼ばれることを嫌っていました。山岳小説家と紹介されることの苦悩を自伝的な小説として発表しています。新田次郎さんが受賞した賞に「吉川英治文学賞」がありますが、この賞を受賞した作品は歴史小説の「武田信玄」です。「武田信玄」の続編も書かれていて、さらにその続編を書かれているときにはかなりの熱の入れようでご自身の身体を顧みないほどの入れ込みだったことが明かされています。

山岳小説以外の著作

小説の中でキーとなっているのは「夢と挑戦」です。登山家だけではなく、科学者や技術者そして医者。そして、自らの強い信念と意志を貫き道を開いた人物を描いた作品も、大変読み応えがある作品です。21世紀地球規模で考えなくてはいけない自然保護に関しても、長野県に建設予定としてあがったビーナスラインという観光ロードを小説の中で新田次郎さんは反対を示したことでも知られています。

新田次郎作品:山岳以外の作品

  • 怒る富士・・・富士山が突然大爆発した宝永4年(1707年)をテーマにした長編の時代小説。
  • アラスカ物語・・・明治の初めに日本からアラスカに渡った日系1世のフランク安田の半生を描いた作品。
  • 珊瑚・・・こちらは新田次郎作品としてはとても珍しい山ではなく海が舞台の、海洋作品。
  • 武田信玄・・・新田次郎の歴史小説を代表する作品。武田信玄を雄大な構想で描いている長編歴史作品。第8回吉川英治文学賞を受賞した作品。
  • 武田勝頼・・・「武田信玄」の続編で、「陽の巻」「水の巻」「空の巻」の3巻。
  • 新田義貞・・・こちらも歴史小説です。足利家の下風として甘んじてきた新田一族の八代目小太郎義貞の物語が書かれています。
  • 大久保長安・・・「武田勝頼」の続編として執筆された作品で、新田さんは自分の健康を顧みないほどの入れ込みでしたが心筋梗塞で倒れてしまったため未完となりました。
  • ある町の高い煙突・・・日立鉱山が舞台で、世界一高い煙突を企業に建てさせた青年たちを描いた作品。
  • 神通川・・・原因不明の奇病に苦しむ患者たちを見て、原因究明に動き「イタイイタイ病」の原因を突き止めた萩野昇医師を描いた作品。
  • 小説に書けなかった自伝・・・新田次郎さんの自伝小説。
  • 笛師・・・舞台は京都で、龍笛を作る笛師を題材とした作品。
  • 密航船水安丸・・・明治39年(1906年)に水安丸に乗って北米に密航した及川甚三郎がモデルとなっている作品です。
  • 火の島・・・火山性が続いている鳥島での観測することの責務と、そして観測員の死への恐怖。そして特殊な温度計を製作するために奮闘する技術者を描いた作品。
  • 孤愁 サウダーデ ・・・執筆中になくなったため新田次郎さんの絶筆です。この絶筆した作品を息子の藤原正彦さんが書き継いだ形で出版されました。